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現代の「過密化した労働」


18世紀後半から19世紀にかけての工業化に伴って、過酷な労働環境や労働条件が問題となった。
「労働は倫理的性格の活動ではなく、労働者の生存を維持するために止むを得ず行われる苦痛に満ちたもの」と考えられていた。しかし、労働者が不健康な状態では最大の効果を発揮できないということから、労働環境が整備された。
当時の労働問題は肉体を酷使し、危険な作業を伴うもので健康に悪い影響を及ぼしていることが明らかであった。
現代の労働は「過密化した労働」といわれ、それらの問題は工業化の際の問題とは逆に見えにくい過重性がある。「過密化した労働」は、技術革新、IT化によってもたらされた作業や人員配置の効率化によるものである。今まで多くの人数を要していた作業は機械化によって一人でできるようになり、一人に責任が押し付けられることとなる。
また、労働者を競争させて、成果を上げた場合賃金を増やす成果主義によって、労働者を団結させないで、うまく働かせることを可能にする。技術革新に伴って労働は楽になると思われるが、より見えづらくなり、人々の健康を害することとなっている。次に、その「過密化した労働」に起因する人への影響を見ていく。

 機械化やIT化によって、肉体を酷使するような作業が減った分、その機械やコンピューターを使って行う単純な労働作業が増えたといえる。単純作業の特徴は
①日中、同じ姿勢でごく一部の筋肉を動かし続ける
②自分の意志で作業を中断できない
③個人の体の調子を無視、機械的に当てはめ、生産競争により勝手に引き上げる
という点である。例えば、番号案内職場では、座りながら電話をし続けるという作業、ベルトコンベアを使った工場勤務では、立ちながらベルトコンベアから流れてきた品物をひたすら箱に詰めるなどの作業が当てはまる。
これらの作業は、必ず何らかの監視を伴って行われており、さぼるということが許されていなかった。そして、労働者がその業務に慣れていくことを見計らって業務量も増やして生産性を上げていく。このような中で、頸肩腕障害や腰痛などを訴える人が増えた。

 そして、より機械化が進んで効率化を図るにつれて、このような作業は非正規労働者の仕事となっていく。そうすると非正規労働者よりも給与の高い正規労働者(正社員)の仕事は、より高度なものが求められることとなる。会社は、組織をより効率的に運営していくためにグループを作り、そこに経営目標や経営方針を落とし込んでいく。
このようなグループができることによりマネージメント能力が必要とされ、それぞれが成果を上げるために臨機応変に対応していくことが求められた。このように成果を上げなければいけない状況では労働者各々にストレスがかかる。
またそのようなストレスは、いじめや嫌がらせという形で現れることもあり、負のスパイラルに陥る。そして、そのストレスに耐えられなくなった時人はおかしくなり、死を選ぶこともあるのだろう。

これらの「過密化した労働」に起因する身体的・肉体的ダメージは、労働が原因と判別するのは難しい。実際に、判断基準は極めて厳しいものとなっている。
まずは、そのような状況になることを回避しなければならないと思う。
労働者は、使用者と対等な立場になるための3つの権利がある。労働組合を通して、使用者と積極的に交渉して、より良い職場を作っていくべきである。労働基準法の効力は実は弱く、労使協定のほうが強い効力を持つ。そのためにも、今の状況を把握し、労働者は今を変えるという努力をしていかなければならない。(T・Y)