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ブラック企業から抜け出すには
-映画『ちょっと今から仕事やめてくる』を見て考えたこと-
1.はじめに
近年、労働者に違法労働を強いたり、劣悪な環境で働かせるブラック企業が問題なっている。平成27年には、大手広告会社の電通に勤めていた高橋まつりさんが月100時間を超える労働に悩み、クリスマスの日に会社の寮から投身自殺した。この記事では、映画『ちょっと今から仕事辞めてくる』をもとに、ブラック企業の内情を明らかにし、またブラック企業から抜け出すためにはどうすればよいのかを考えていきたい。
2.ブラック企業の定義
映画のあらすじは、青山隆という主人公がブラック企業で働いており、ある日心も体も疲れ果ててしまった主人公は電車の中に飛び込もうとするが、山本と名乗る男に助けられる。山本という男は過去に双子の兄をブラック企業の過重労働が原因でなくしている。最終的に、主人公の青山は、山本に感化されてブラック企業をやめることとなる。ここで描かれているブラック企業の特徴を上げると、違法労働を強制する社訓の音読、上司からのパワハラ、サービス残業、セクハラなどがあげられる。実際にこのようなことが現代日本のブラック企業で行われていると考えられる。一般的には、違法または悪質な労働条件で働かせる会社を指すブラック企業は、主に以下の3種類に分けることができる。
①長時間労働やサービス残業を強いる「使い捨て型」
②パワハラや退職強要を放置する「無秩序型」
③大量採用後に必要な人材以外をやめさせる「選別型」
映画の中でのブラック企業は、「使い捨て型」「無秩序型」に当てはめることができると思う。
3.なぜブラック企業で働き続けるのか
映画の主人公青山はこのようなブラック企業であってもなお働き続けるがそれはなぜだろうか。考えられる理由としては、まずやめたらまた再就職するのが大変だということだ。青山や山本の兄がそうであったようにブラック企業に入るような人はいわゆる低学歴(あるいは学校歴)で就職に苦労した人がほとんどであり、とりあえず企業に就職できたことに満足している人が多いと思われる。次に、「辞める」という一言が言いづらいということだ。映画の中でも青山は山本に感化されて辞めることを伝える決断をしたが、それまでは自殺することを考えていた。一度会社に入ってしまうと、「石の上にも3年」と言われるように、周りからの目もあるし、そもそも生活するうえで欠かせない収入減を失う(なお転職も難しいと考えている)ことになるのだからなかなか辞められない。このようなわけで、今の若者はブラック企業に就職しても簡単にやめることができないと思われる。
4.ブラック企業の負の連鎖
ブラック企業は、あってはならないにもかかわらず資本主義競争において生き残りやすい。サービス残業を強いたり、有給休暇を取らせなかったり人件費を最小限に抑えているからだ。その上、そのような劣悪な労働環境を日本人の根性論や低学歴者の再就職に対する不安が許してしまい、ブラック企業をすぐにやめてしまう人は少ないので、結果経営し続けることができるということである。
5.ブラック企業から抜け出すには
ブラック企業はとても抜けづらいということを前の節で述べたが、映画を例にしてブラック企業から抜ける方法を考えていくと二つあると思われる。まず、信頼できることのできる友人を持つことである。そのような友人がいれば、仕事のこと愚痴などを話すことができるし、自分がつらそうにしていたら友人が異変に気付いてくれる。映画の中では少しファンタジーに描かれていたが、要するに相談することができ、心配してくれる友人を持てということだと思う。次に、どんなに忙しくても家族と連絡することが重要だということである。映画の主人公青山もずっと家族と連絡をしていなかったようだが、山本に出会い家族と連絡するようになってから家族と職場での話や人生の話をすることを通して、家族から自分への愛情に気づかされている。ブラック企業で働いているとあまりにも忙しすぎて、そのことしか考えられなくなってしまう。そして、辛さが限界を超えると死んでしまうのだ。家族や友人とつながりを持つことで、「周りにはたくさんの支援者がいて、一人で生きているわけではない」ことに気づく。まとめると、相談する相手を常に周りに置いておく必要があるということだ。そうすれば、周りの人が動いてくれるかもしれないし、自らも何か気づかされ死を選ぶということまでにはならないかもしれない。
6.おわりに
この記事では、ブラック企業問題について取り上げ、その内情を明らかにして抜け出す方法を考えた。その結果、利益を最小限のコストで最大限のものにするため労働者を酷使するブラック企業に対して社会のステレオタイプや不安から働き続けてしまうという実情があり、身近な相談者がブラック企業から抜け出すきっかけとなると考えた。
映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017年5月27日劇場公開)
産経新聞(2018)「電通過労自殺3年、まつりさん命日に母が手記「働く人の命と健康守って」(https://www.sankei.com/life/news/181225/lif1812250001-n1.html) (2019年6月27日閲覧)