労働者派遣法は、それまで「業務請負」として類似する形態で行われていた状態から、労働者を保護し適切に運用することを目的として、1986年に制定されました。当初は、専門的な業務のみを適用対象業務としていたが、1999年の改正では、これまで労働者派遣の適用対象業務を限定していた形から一転して、原則として自由化され、反対に適用除外業務を指定する形となった。適用除外業務としては労働者派遣法第4条第1項に以下の4つがあげられている。
①港湾運送業務
②建設業務
③警備業務
④ 「その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当で ない」 として政令で定める業務
禁止の理由を解説
①港湾運送業務
元より港湾業務は繁忙期と閑散期の差が大きいという特徴があり、港湾労働法において特別な雇用調整制度が設けられていた。そのため、労働者派遣というほかの労働力の需給調整のシステムを導入する必要がなかったためである。
②建設業務
建設業務は重層的な下請け関係の下に業務処理が行われており、建設労働者の雇用の改善等に関する法律により、労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致する請負という形態となるよう雇用関係の明確化、雇用管理の近代化等の雇用改善を図るための措置が講じられている。そのため、労働者派遣という雇用主と指揮命令するものが一致しないシステムを取り入れてしまうと、建設労働者の雇用改善を図る上でかえって悪影響を及ぼす可能性があるため。
③警備業務
警備法において、警備業務の適正な遂行を確保するため、警備業者が警備員を直接雇用 して業務上及び身分上の指導監督を行い、すべて請負形態により自らの責任において業務を処理することが求められているためである。
図1 派遣と請負の違い
(出典)茨城労働局
④政令で定める業務(労働者派遣法第2条)
この中には医療関係業務があるが、これは専門職が一つの「チーム」を形成し、当該チーム により提供されており、適正な医療の提供のためには、チームの構成員が互いの能力や治療方針等を把握し合い、十分な意思疎通の下に業務を遂行することが不可欠であるからである。
これらの禁止業務において派遣労働事業をした場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第59条1項)となっており、知らなかったでは決してすまされない。
佐野嘉秀(2009)「なぜ労働者派遣が禁止されている業務があるのか」
『日本労働研究雑誌』No.585、pp70-73