公正な採用選考の基本
日本国憲法は、基本的人権の一つとして全ての人に「法の下の平等」と「職業選択の自由」を保障している。「職業選択の自由」は、誰でも自由に自分の適性・能力に応じて職業を選べるということであるが、この「職業選択の自由」の精神を実現するためには、ごく限られた人にしか門戸が開かれず、人種、信条、性別、社会的身分又は門地など本人の適性・能力以外のことを採用基準とするなどの不合理な理由で就職の機会が制限されない「就職の機会均等」の実現が不可欠だ。
次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがある。(厚生労働省HPより引用)
【a.本人に責任のない事項の把握】
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
【b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握)
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
【c.採用選考の方法】
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
就職差別につながるおそれのある不適切な質問事例(大阪労働局HPより引用)
事例1
採用面接時に、「ご両親はおられますか」「自営業ですか」「兄弟はいますか」「どのあたりに住んでいますか」「家は持ち家ですか」「いつから住んでいますか」などの質問を受けた。また、求人票の選考方法には「一般常識と面接」とありながら作文が実施され、作文題名も「私の家族」というものであった。
事例2
採用面接時に、次のような質問を受けた。
会社:女の人がお茶くみや掃除をするのをするのをどう思いますか。
生徒:やれる人がやれば良いと思います。
会社:私は、男性より女性にやってもらいたいなあ。
生徒:じゃあ、喜んでお出しします。
会社:人付き合いは得意な方ですか。彼氏はいますか。
生徒:・・・。
事例2は典型的な男女差別につながる面接であるが、事例1の家族に関してや住環境に関しては面接からくる緊張を和らげようと悪気がなくとも質問してしまうことがある。面接をする際は事前に質問項目を策定し、これらに違反していないか注意しましょう。
大阪労働局「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例」
厚生労働省「公正な採用選考の基本」